地下鉄に乗って 読書感想

自己実現
Version 1.0.0

タイトル:地下鉄に乗って
著者:浅田次郎
発行所:株式会社講談社


~あらすじ~ 
主人公の小沼真次は大企業である小沼産業を一代で築き上げた小沼佐吉の息子。
三兄弟の真ん中である真次は兄が自殺したことにより、本来は父の事業を継ぐ予定だった。
しかし、元々強引で暴力的な父に対して嫌悪感を抱いていたなか、兄の死がきっかけで父とははっきりと関係を切ってしまう。

それから30年という月日が流れ・・・

父が成し遂げた事業の大きさに比べ、真次はあまりに平凡な人生を過ごしていた。
そんなある日の同窓会の帰り道。
薄暗く、人気の無い地下鉄の通路で不思議な体験をする。
地下鉄駅の階段を上がってみると・・・
 突如、三十年前に家族と暮らした過去の町が目の前に現れるのだった。
突然の出来事に困惑する真次。
やがて、もうひとつ重要なことに気づく。
それは、その日がちょうど兄が自殺をする日でもあるということだ。
兄を探し真次は運命を変えようと決意する。
そして時間を行き来するうちにさらなる過去にさかのぼり・・・
やがて兄の自殺の真相や父の過去に主人公は向き合うこととなる。
果たしてタイムスリップというこの列車は真次を乗せてどこまで走るのだろうか、
終着駅には一体何が待っているのだろう・・・

~前書き~
男気のある登場人物が多く、任侠物が好きな人には結構刺さる物語だと思います。
作者の浅田次郎さんは極道をテーマとした作品をよく書いていたそうで、そういった作品から脱却した初めての作品が本作とのことです。
本作は過去作の色も濃く表わしているのでしょう。
そういった背景からか父が妾を抱えていたり、男性が中心的に書かれていたりする場面もあります。
その点についてはマイナスに感じる人もいるかもしれないません。
ですがとても評価できる点も多いため是非一読してほしい作品です。

~感想~
おすすめ度:85点/100点中
展開が早く、物語自体はシンプル且つ理解しやすいため途中で理解が追い付かず置いてけぼりになることは基本的にはないと思います。
登場人物はそこまで多くないのも読みやすい要因の一つです。それにも関わらず登場人物の人間味はよく描写され、心情に共感しやすいです。本作の醍醐味の一つでしょう。
また、文章表現が秀逸です。
現在→過去へタイムスリップする際、掴みどころのない描写により次元の狭間という抽象空間を上手く表現されていますし、過去にタイムスリップしているなか見知らぬ若者からタクシーを乗る際の注意を受ける場面では
 「この時間にタクシーにおのぼりが乗ったら、かもねぎだからね」
かもねぎは何となく分かりますが、「おのぼり」て何?て思ったら上京してきた人を表す言い方です。
「お」を付けているから丁寧語ですが、文脈からすると少しからかっている言い回しなのでしょう。
こういった表現が物語に昭和の古き良き馴染み深さ、任侠物のような堅気の雰囲気を出すことに成功していると思います。
余談ですが一部、作者自身の体験をもとに描写されている箇所なのではないかと思う所もありました。
だからこそ臨場感あるシーンが多いのではないでしょうか。
作者については下記のWikipediaに詳細が記載されています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%85%E7%94%B0%E6%AC%A1%E9%83%8E

~最後に~
本作は作者のこれまでの人生が強く反映された作品に感じます。
戦時中や戦争後の復興期、バブル時代、昭和時代の全般がこの物語では描写されており、作者自身がまさにその時代の狭間で生まれ、様々な体験をし、見聞きをしたからこそ現実味のある物語に仕上がっているようです。
文中での表現や言葉が物語の作り込みを助長しており、表現が素晴らしいです。
時代の流れは否応なく、環境を変え、そこにいる人さえも変えます。
それは小沼佐吉という一人の人間を通して私たちに強く伝えてくれます。
ですが、同時に小沼佐吉は時代が大きく変わろうとも変わらずに貫いた行動があります。
時代や環境がいかに変ろうとも守り通さないといけないものがあるかもしれません。
物語の最後に真次は大切なものを見つけたようです。
まだ読んでいない方はぜひ本作を通して、自分なりの答えを見つけてほしいです。
唯一残念だったのが最後の終わり方です、別の結末を見たかったですね。。

本作を読んだ後は地下鉄に乗る際は様々なことを考えるようになりました。地下鉄は毎日、沢山の人を乗せます。それは沢山の人生を乗せ、目的の場所へと運んでくれます。そう想いを巡らせた時、地下鉄に畏敬の念を抱きました。
「さぁ、メトロに乗っていこう」
そして、いつか本当に非現実的な出会いや体験へといざなってくれるかもしれないです。

以上

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